5月の美容矯正メッセージ

2022顔と体の美容矯正コンメンタール(Kommentar)

質問者:Yuko-Sさん(東京表参道・美容矯正セラピスト)

 

鎖骨の左右の高さの違いが

顔の違いに関係しているのはいつも施術していて感じておりますが

どのように関係しているのか

すこし詳しく教えて下さい。

 

質問の回答です。

ご存知のように

背中の肩甲骨と上肢は筋肉と靭帯で胸郭にぶら下がっているだけで体幹のどの骨とも接続がなく関節もありません。

鎖骨は、この上肢と肩甲骨を体幹に繋ぐ唯一の棒状の骨です。

つまり、肩甲骨と腕は鎖骨の胸鎖関節部分のみにより身体の中心の構造体と接続していることになります。

この胸鎖関節の裏側には舌骨下筋群の胸骨舌骨筋と胸骨甲状筋が付着しているためこの部分の弛みや機能低下は喉周りの膨らみやたるみと関係しています。

今回はこの鎖骨と顔の関係について少し詳しくお話しいたします。

鎖骨体のどのような動きであっても

そこに広く付着している表情筋の広頸筋を経由して顔面の筋膜に変化をもたらします。 

鎖骨には内側端にある胸鎖関節と外側端にある肩鎖関節があります。

胸鎖関節は大きな可動性がありますが

肩鎖関節は僅かな動きしかありません。

しかしながら、

あまり、論じられることがありませんが

この僅かで微妙な動きをする鎖骨の外側端にある肩鎖関節の動きは肩の問題だけではなく、顔の張りにとっても非常に重要な機能です。 

実は、この肩鎖関節部分の自由度3(屈曲・伸展・外転・内転・垂直軸で内旋・外旋)の微妙で僅かな動きが

肩甲骨が動く時の面と胸郭の後面の間の密着した円滑な滑り運動をもたらすと同時に

肩甲上腕関節の関節窩での上腕骨頭の安定した動きをもたらします。

 

美容矯正の考えでは

 

この肩鎖関節の微妙な回旋調整運動が

肩甲帯の安定性と大きな可動性を生み出しそこに付着している広頸筋を経由して

口角から頬周りの筋膜に弾力性のエネルギーを伝達することになるとしています。

 

鎖骨の動きについて一例をあげてお話しします。

 

解剖学的には鎖骨は成人で長さが約12㎝~1㎝程度あります。

 

上から見るとまっすぐな棒ではなく内側は凸状で外側は凹状で全体的にゆるやかなS字状の形をしています。

 

このゆるやかなS字状の鎖骨に広く付着している薄い表情筋の広頸筋はこの形状で鎖骨に張り付けられているため、そのS字状の張力がそのまま口角や頬周りの顔面筋膜に反映されて接続します。

 

また、静止姿勢位では

鎖骨の長軸は水平面で僅かに上方を向いており、胸部の前額面よりも約20°後方に位置しています。

しかしながら

この角度は肩甲骨と腕の動きに連動してさらに10~30°の角度の範囲で前後に移動して変化します。

したがって、広頸筋もその動きに追従して動き口元にも張力が伝達されます。

鎖骨と肩甲骨の間の角度(肩甲・鎖骨角)は約60°です。

この角度も腕の動きや肩甲骨の回旋の動きに連動してさらに+10°前後の開きが起こります。

この開く角度の変化は鎖骨の内側端の胸鎖関節と肩甲棘根までの角度の変化をもたらし、顎先からエラまでの張力の変化を引き起こすことになります。

もし

胸郭に歪みがなく、左右の鎖骨の位置や角度が同じで同じように動いているのであれば口角や頬周りの形は左右同じになります。

しかしながら、実際には

姿勢に問題のある人の場合

左右の肩甲骨の位置や高さに違いがあり

また鎖骨の高さや位置にも違いがあります。

この関係からもわかるように

左右の顔面筋膜のバランスが同じ人はほとんどいません。

先ほどもお話ししましたが

鎖骨は内側に胸鎖関節、

外側には肩鎖関節の2つの関節があります。

内側の胸鎖関節の主な役割は

簡単に言うと、鎖骨に広範囲な動きをもたらすことで肩甲骨や上腕骨の動きの舵取りをすることです。

この動きの一つに鎖骨の前額面での上下(挙上・下制)の動きがあります。

最大で35°~45°の鎖骨の挙上と10°の鎖骨の下制が多くの研究者により報告されております。

この動きによるデコルテ部分の左右の鎖骨の高さの違いは

後頸筋を経由して口角の傾斜や頬周りの膨らみの違いやたるみに影響します。

先ほども一例でお話しした

肩甲骨と腕の動きに連動する

それぞれ10°~30°の鎖骨の前方への突出と後方への後退の左右の違いは

片側が前にあり反対側が後にある非対称な顔の原因の一因にもなります。

そしてさらには

鎖骨は上肢を頭上に挙げる運動中(外転及び屈曲)長軸に対して20°~35°の後方回旋を起こします。

これは、肩甲骨をわずかに後傾するため肩が後ろに回転します。

腕を下げる際には後転した鎖骨は元の位置に戻りますがさらに後ろに伸展と内転をすると今度は肩甲骨はわずかに前傾します。

この左右の非対称な状態が固定されてしまうと片方の顔の筋膜は前下方に下がってしまい、反対側は後下方に引き下げられて捻れてしまいます。

一方で

鎖骨の外側端にある肩鎖関節は肩甲骨との間では僅かな動きしかありませんが

この動きは専門的には「回旋調整運動」とよばれ

肩甲骨が胸郭の形状に沿ってその周りを滑らかに動く(上方回旋・下方回旋)ために

重要な役割を担っています。

肩の高さや肩甲骨の位置や傾きに違いがある場合、

もちろん筋肉や筋膜等の支持組織に問題がありますが、

この肩鎖関節部分の動きの制限が解放されない限り

その位置や傾きのバランスを回復するためには長期的な時間が必要になります。

 

ちなみに

腕を完全に頭方に挙げる180°外転の際には

120°の肩甲上腕関節の外転と35°~40°の外旋が同時に起こります。

さらに60°の肩甲胸郭関節の上方回旋

25°の胸鎖関節の挙上と25°の後方回旋、20°の後退が起こります。

このとき肩鎖関節での肩甲骨面は30°の上方回旋と同時に20°の後傾、0°~5°の外旋が起こるとされております。

このような鎖骨と肩甲骨や腕の動きの機能が左右の肩甲帯で総合的にバランスよく発揮されることで鎖骨の高さが揃うことになります。

もう一度同じ話の繰り返しになりますが

肩の動きによる肩鎖関節の動きは

鎖骨の外側端に対して肩甲骨が回旋または捻じれ運動(回旋調整運動)を行います。

この微妙な動きが肩甲骨を胸郭の形状にうまく合わせなおかつ肩や腕の全体的な動きを大きくします。

顔の筋膜の弾力性の低下には体中の多くの場所が関係しています。

肩甲骨と関連している支持組織の機能低下もそのなかの一つです。

この左右の肩周りの動きと位置が総合的にバランスよくなるとことで顔の筋膜の弾力性を維持できることになると考えられます。

なお

肩甲骨は静止位姿勢では

通常、第2~第7肋骨の高さに位置し、内側縁は脊柱から約6cm

離れており

個人差はありますが

約10°の前傾

5~10°の上方回旋

30~40°の内旋

の状態で背中に位置しています。

 

 

 

 

 

 

 

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