2022顔と体の美容矯正コンメンタール(Kommentar)
質問者:maki-Kさん(東京都新宿区在住:鍼灸師、美容矯正セラピスト)
前回の質問に関連しての質問ですが
顔のたるみや歪みが肩と腕の動きと位置が関係しているのであれば手首や指の動きや位置も顔のたるみや歪みに関係していますか?
質問の回答です。
顔のたるみや歪みには、
身体の多くの部分が関係していますが
肩から腕の部分もその中の一つです。
今回はその腕の中で最も遠いところにある手と手首の関節の動きと顔の関係に焦点を絞ってお話しします。
通常の静止位(腕をぶら下げているだけの状態)では
顔面の筋膜は最も遠い手の5本の指先・手掌・手首・肘・肩・鎖骨の順番で常に下方向に牽引されています。
手の部分では顔に直接的に関係しているのは
構造的に手の要になる部分の「中手部」という部分です。
具体的には、
足の土踏まずの部分のアーチと同じように
手のアーチの形状や緊張状態も顔の張力に関係します。
手掌のアーチは3箇所に分けられます。
まず
1,第3指(中指)から第3中手骨・手根部分の有頭骨や月状骨に向けて放射状に走る縦軸のアーチ
2,中手部(親指から小指までの中手骨)に走る横軸のアーチ
3,手根部(8個の手根骨)に走る横軸のアーチがあります。
これらのアーチはそこにある骨間靭帯や側副靭帯によって互いに結合していて、手を開いたり握ったりする時に手掌の形や腕曲の深さを調整しています。
手掌の深さや張力の違いは頬の膨らみの違いに現れます。
したがって、手首や手の掌が硬かったり
動きが制限されていると
最終的に頬の膨らみや弾力性に問題が発生することになります。
ここで少し
個々の手根骨との関連の話をいたします。
通常、指を広げて手を開いた状態では
親指から小指までの5本の縦方向に走る
張力は中指から手根の部分にある有頭骨という骨に集まります。
つまり、中指の手首側の部分に位置する有頭骨が扇の要の中心になり5本の指が開いています。
しかしながら、
指関節を曲げ(屈曲)手掌でお椀の形を作る(湾曲)とその中心軸は移動して、
親指と人差し指の後ろの手根部分に横たわる舟状骨という骨の部分に位置がズレます。
つまり、手を開いている時と握った時では中心軸の骨が変わるため位置がズレた部分だけ手掌筋膜の張力の方向も変化してしまいます。
また、手は、通常、静止位では手首(橈骨手根関節)から先はまっすぐではなく
小指側に20°~25°傾斜(尺側傾斜)してついています。
また、手首の手根骨がつながる関節部分は前腕(橈骨手根関節)と僅かの隙間ですが
小指側の尺骨と三角骨の間は9㎜~12㎜もの隙間があり離れています。
このような手首の部分の構造的な違いが
様々な手の動きを可能にしています。
その動きの変化と張力がその先に影響して肘や肩や鎖骨の部分からさらに顔つきに影響することになります。
もしその関節包内の運動が手首や指の骨折や靭帯の損傷等によって制限されてしまいますと
その影響はさらに複数になって顔全体に影響することになります。
が、特に手の掌の開きの状態と手首の角度は口元や頬の膨らみの変化に大きく影響を与えています。
ここでは、
少し手の動きの範囲についてお話しします。
例えば、
先ほどの第3指を軸として手は親指側に15°~20°内転(橈屈)でき小指側に約30°~40°外転(尺屈)できます。
また手首に対して手関節は0肢から約70°~80°曲げ(屈曲)られ、約60~75°まで反らす(伸展)ことができます。
しかしながら、
通常、私達が主に日常生活で頻繁に使用している角度はこれらの組み合わせで屈曲40°伸展40°橈屈10°尺屈30°の範囲です。
また、手は伸展時には無意識で自然に橈屈が起こり
屈曲時には自然に無意識で尺屈が起こります。
この自然の組み合わせと一緒に
8個の手根骨は意識的な日常の生活での手の動きに伴い、僅かながら複雑な動きをしています。
このことについて具体的に少し詳しくお話しします。
先ほども話しましたが
手根骨は全部で8個あります。
これらの骨はそれぞれ大きさも形も違っていますが靭帯によって結合しています。
手首や指の動きに伴いそれぞれの関節部分は僅かに動きます。
例えば、
手の外転時(手首を小指側に傾けて曲げる)
では手根全体は中指のラインにある有頭骨を中心に回旋します。
少し専門的で難しい表現になりますが
外転の動きが進むにつれて
親指のラインにある大菱形骨と小指のラインにある小菱形骨は手首の橈骨部分に近づくように動きその後ろにある舟状骨を橈骨との間で挟んで圧迫します。
結果的に舟状骨は手首の関節(橈側手根関節)で屈曲し手根骨遠位列(手根中央関節)では伸展を生じて横に寝て沈み込むことになります。
手首(橈骨手根関節)が屈曲すると中指のラインにある月状骨は後方に傾斜します。
そして、その手前にある中指のラインにある有頭骨は月状骨との隙間を作りながら前方向(遠位)に降下します。
そして手根中央関節での伸展の結果として後方に傾斜します。
先ほども話ましたが
外転時(手首が小指側に傾斜する手の尺屈)には舟状骨が沈むように動きますが、
さらに外転により舟状骨が沈みこむ時
中指のラインにある有頭骨と薬指と小指をまたぐラインにある有鈎骨は手首(橈骨手根関節)に対して上方に滑走します。
それと一緒に小指のラインにある三角骨も中指のラインにある有頭骨の頭部に向けて有鈎骨上を上昇します。
それとは逆の動きである手の内転時(手首が親指側に傾斜する橈屈)は反対側に手根骨は移動します。
つまり、
中指のラインのある月状骨は橈骨の下を完全に滑ります。
そして親指のラインにある大菱形骨と小指のラインにある小菱形骨は前方向(遠位方向)に動き舟状骨の入る空間を作ります。
そして、舟状骨は靭帯によって引っ張られ手首(橈骨手根関節)の伸展を生じながら前方に立ち上がります。
これに続いて前方(遠位の手根中央関節)では屈曲が生じるため
親指のラインにある大菱形骨と小指のラインにある小菱形骨はその後ろにある舟状骨の下面の位置で前方向(遠位)に滑ることになります。
小指のラインにある三角骨は関節円板を介して尺骨頭にぶつかるように前方向に上昇するためそのストレスは前腕に伝わることになります。
その時、
中指のラインにある有頭骨は後ろ(近位方向)に動くので月状骨との間に必要な空間は減少します。
さらに
月状骨は前橈骨月状靭帯の弛緩によって橈骨手根関節での伸展を伴い前方向に傾斜します。
有頭骨もまた前方(手根中央関節)での屈曲を伴い前方に傾斜することになります。
少し専門的な複雑な話になりましたが
以上のことを整理してまとめると
手の外転時(尺屈)は
舟状骨の活動面は月状骨の活動面が増加するのに対して減少します。
内転の時にはその逆になります。
手根の屈曲は
橈側手根関節での外転と手根中央関節での内転を伴います。
手根の伸展は
橈骨手根関節での内転と手根中央関節での外転を伴うことになります。
手根の伸展は
指の指屈筋と協同的に自動的に働きます。
手根の屈曲は
指の指伸筋と協同的に自動的に働きます。
通常では、手の把握は、手根を40°~45°屈曲し15°尺側変位(内転)の肢位の時最も機能的に営まれることになります。
このように、手や手首の動きにより手根骨の僅かな関節での滑りや動きがあることが
近年専門分野の研究で解明・実証されてきています。
この部分の指や関節の動きの組み合わせが
手首や手の掌の弾力性に深く関わっていることになりその緊張力や牽引力はそこから筋膜ルートを経由して一番遠い顔まで到達することになります。
顔の筋膜と直接的に関係する手根骨の動きとその筋肉を分析すると
親指側の大菱形骨と舟状骨からは橈骨の腕橈骨筋を経由して肩の鎖骨の三角筋前部繊維からのルートは広頸筋の外側の筋膜に接続します。
このラインは下あごのエラから後ろ部分の筋膜の弾力性に深く関わっているルートです。
また親指からのルートでは橈骨の橈骨粗面に付着する上腕二筋筋腱の短頭側へ進むルートがあります。
このルートは肩甲骨の烏口突起から鎖骨と肋骨間の筋膜から喉周りとあごの先端(オトガイ)部分の弾力性に深く関係するルートです。
口元や頬周りの緊張や弾力性に深く関係する筋膜ルートは下記の筋膜ルートです。
まず第2中手骨底から上腕骨内側上顆へ付着する橈側手根屈筋です(手根部の関節に対しての手の屈曲及び外転と肘関節に対しての弱い回内作用)。
次に手根骨の有鈎骨鈎・豆状骨からの尺側手根屈筋です(手根部の関節に対しての手の屈曲及び内転)。
次に手掌腱膜からつながる長掌筋です(ものを掴む時に手掌腱膜を緊張させて手根部の関節に対しての屈曲)。
これらの筋肉は上腕骨の内側上顆を経由して上腕骨の大結節稜に付着する大胸筋鎖骨部につながります。
大胸筋鎖骨部は鎖骨の内側半分に付着しており
顔の正面の口角や頬の膨らみ法令線に直接影響を与えるルートです。
以上のいずれのルートも
結果的に表情筋の広頸筋に接続することになります。
最終的に口角の傾きと頬の膨らみ首のたるみやしわに関係することになります。
たとえ、このラインのどこかでの僅かな張力の変化であっても顔のどこかの筋膜の位置に変化をもたらします。
このように考えると
普段あまり考えることがない
顔から最も遠いところにある手の動きや手首の形や動きは肩や鎖骨を介して
顔の弾力性や緊張に対して特に影響を与える重要な部分ということになります。
最後に
腕の筋力や手の握る力が弱ると顔のたるみやシワに関係することがあります。
特に握力が弱い場合には手根の屈筋支帯の下の手根管部分に問題があります。
専門的な研究では
握力が弱い場合には子宮・卵巣等の婦人科系の機能と関係するとされています。
さらに腰痛と関連して顎関節の靭帯の張力低下が起こりそれによる顎関節の緩みとあごのズレが起こります。
もしかすると内臓の働きや顎関節のズレも手首や指の浮腫みや握力の低下と痛みの原因となるのかもしれません。
そして、
これらが総合的に関係しあって
最終的に頬や口元の張力にも影響を与えているのかもしれません。