2018美容矯正の構造力学的視点
質問者:Hiromi-Tさん東京都世田谷区(体育大学学生)
勝山先生に質問です。
身体の動きが顔の歪みに関係しているのは分かりますが
メカニズムが複雑でよくわかりません。
具体的にどのように関係しているのかわかりやすく教えてください。
質問の回答です。
老化によるもの等があるため、全てではありませんが、多くの場合、顔の歪みや変化は体を動かしている時の関節や筋肉の動きを一纏めにして一定の方向に伝達している筋膜全体の緊張によるものです。
私たちの身体の構造は厳密に言えば左右非対称です。
したがって顔も左右非対称です。
顔の歪みに関係する部分は、顎関節の動き以外では、殆どの場合両手・両足と体重の床方向への移動と、その反対の床方面からの身体のバランスを取るために生じる反発張力によるものです。
したがって、個々人の利き足・利き手による筋力の違いや内臓の位置的な左右の違いがそのまま顔の違いに反映されてしまいます。
少し、具体的に歩行と関連する骨盤から下肢と顔の関連性についてお話しします。
歩行時では骨盤の動きは必ず股関節・膝関節・足関節・足の指先の関節と連動します。
したがって、これらの関節が十分に動くことが顔のバランスを保つためには重要であり必要不可欠です。
もし、これらの関節のどこかに動きの悪いところがあると、その分だけそれ以外の部分に過剰に負担がかかり歩行のモーションに変化が生じます。
それが長期間続くと、太ももやふくらはぎ、骨盤周りの筋肉の左右の太さや形に違いが出てきます。
さらにその上の方では、胸郭の捻じれや首の左右の太さの違いが生じ、顔の左右の形の違いまで生じてきます。
歩行中の正常な骨盤の動きは、常に左右への回転・前後への傾斜・上下への側屈の3方向に変化します。
またこれとは別に背骨の中心部分の体幹は捻じれるように左右に回転します。
それに対して肩の肩甲骨からぶら下がる上肢は体幹と反対方向に捻じれて動いています。
この背中にある表層の肩甲骨や上肢の部分と深層の体幹の部分の間の筋膜層に弾力的な滑りが無くなり硬くなると、お互いに必要な動作をする時に別々に滑ることが出来なくなり、体幹と上肢が一緒に一塊になって動いてしまいます。
よく耳にする話ですが、腕を上に挙上する動作をすると胸郭も一緒に同じ側に動いてしまう人がいますが、このパターンが最もよくわかる代表的な例です。
この様な背中の部分に固着がある場合には、歩行時に前に出している手の側の方に首の前面も引かれて行きます。
反対側の手は後ろに動かすため、その後ろ側に首の後面が引かれてしまうために、首全体の皮膚や筋肉に捻じれが生じます。
さらに、その上の方では頭の位置の傾斜や回転が生じるために、顔は正面の中心を向くことが出来ていても、アゴの位置や顔の筋膜や皮膚に捻じれが生じます。
この柔らかい部分の捻じれは、顔面と首の皮膚や筋膜の中を走る神経・血管・リンパ・脂肪の位置や形の変化に影響します。
顔と歩行の関係性の話をし始めると、膨大な量の知識と説明の時間が必要になるため
ここでは限定的に顔の一部分であるアゴ先の位置と関係するお話をします。
一般的には、体の両側のバランスを整えるエクササイズや運動法が知られていますが
厳密にいうと、それを行うだけでは不十分といえます。
何故かというと、アゴ先の位置には内臓を包む筋膜網が関係しているからです。
したがって、アゴ先を揃えるには内臓筋膜のバランスを整えることが必要です。
ただし、内臓の筋膜を自分で整えるのは殆どの人には無理な話です。
そこで、手段として内臓筋膜に張力と刺激を与える歩行動作を行うことが必要になります。
具体的には、あまり知られていませんが、アゴ先を揃えることのできる動作としては歩行時に後ろに引いている後ろ脚の終わりの動作が重要になります。
この動作の終わりごろには、その緊張力は足先から太もも、骨盤や胸郭から頸部そしてアゴ先まで伸びて行きます。
少し難しいかもしれませんが、重要な点は、この動作中に足の指先を反らし、足関節を甲の方に向かって背屈し、膝をしっかり伸ばした状態で太ももを内側に捩じり、股関節を外に開くようにすると骨盤底から内臓筋膜に張力が起こり、その力は舌骨から顔のアゴ先のオトガイまで達します。
この動作をスムーズにできない人は股関節が正しく動くことができていないため、体の中心部分の体幹のねじれのバランスが崩れてしまいます。
その代償として、上肢の動きが過剰になったり、肩を左右に横に動かすように動くようになったり、体を上下に傾けたり、斜め姿勢で歩くようになってしまいます。
したがって
首の中心とアゴ先については、左右の足先から股関節までこの歩行時の後ろ脚の位置とモーションの改善が必要になります。
アゴ先のためには歩行の後ろ脚の位置や関節の動きの総合的な緊張のバランスが必要ですが、顔のその他の部分へのアプローチはこれとは違うルートを刺激する歩行モーションが個々に必要になります。
このように考えると、顔は独立しておらず全体の一部であり体の動きの繰り返しにより連続的に変化しますが、バランスの良し悪しに関わらず、顔はそのまま体全身の仕組みの状態を映し出しているといえます。