2022顔と体の美容矯正コンメンタール(Kommentar)
質問者:Kesae-Wさん(ニュージーランド・美容矯正セラピスト)
ご無沙汰しております、勝山先生。
今日は、クラフト、の効果についてお聞きしたいことがあります。
今までの施術では数回続けることで左右差の肩の傾きの違い、肩の丸みも改善されてくるというのがパターンでした。
今回の相談はクライアントがダンサーで、術前よりも施術後の方が更に右肩のラインの傾きが落ちてしまいました。
しかし施術前のチェックでは股関節の開きは左が良く、右が詰まっていましたが、術後右側は改善し、立位に安定感も戻りました。ハイキックの時、股関節からの動きで腰と脚の分離を感じられるようになった。ウエストラインのカーブも術前は左が大きく、右が直線的だったのが術後は左右ほぼ等しくなりました。
下半身の安定がでてきてターンが速く、良くなったという報告を貰ったんですが、なぜ上半身の肩の左右差が出てきたのでしょうか?体の中で何が起きたのか不思議でなりません。
この表れはバランスの整う過程の一時的な現象と受け止めて筋筋膜ルートが関係しているのでしょうか?
お忙しい所恐縮ですが、アドバイスいただければさいわいです。
ご質問の回答です。
具体的なことがわからないので、あくまでも仮定の話しになりますが、おそらく今まで
体幹の歪みが存在したままの状態での肩甲帯の水平バランスが保たれていたのではないかと思われます。
この場合、体幹とのバランスを保つために肩甲帯は過緊張になり固定されることになります。
つまり、肩甲帯の動きが減少したままになりますので
体幹が正しくバランスされた時には、その分だけ固定された状態で移動してしまいます。
具体的には、体幹の変化に応じてバランスを保つための胸郭上での肩甲骨の滑る動きが減少している時に起こります。
一般的には前鋸筋や小胸筋等の過緊張があると思われます。
これらの筋肉をリリースしてみては如何でしょうか。
ただし、基本的には、体軸の関節が安定していなければ、また同じように
代償的にゆがみパターンが生じてしまいます・。
この場合、最も重要な動きをするのは
股関節の関節臼と大腿骨頭部の接触面の圧縮力と滑る範囲の構造が深く関係することになります。
一般論では、体幹の筋膜緊張ルートが顔面筋膜まで伝わることが顔面の筋膜に影響しますが、現実には股関節の安定的な動きと関節周りの組織の弾力性が重要です。
ここで、今回は詳しく顔と骨盤の股関節の関連性に焦点を絞ってお話します。
体幹で顔に大きく影響する部分は股関節です。
身体の体重は骨盤から股関節を経由して下肢へ伝わり最後に接地する足に伝わります。
その力はそこからすぐに反対方向に切り替わり股関節を経由して骨盤から体幹へ伝わり最終的に顔の位置や輪郭へ伝達されて筋膜的にその部分の形状に影響します。
女性の顔のたるみには身体の様々な部分が影響しますが
股関節もその中の一つです。
特に、骨盤内臓の婦人科系の機能低下が起こる多くの40代以上の女性の場合はそれがいえます。
例えば片脚立ちが困難であったり、階段や坂道の登り降りや長距離歩行などで悪化する股関節の痛み等が起こり、さらに姿勢の不安性、腰背部の痛み、膝関節痛、足首の腫れや痛みと一緒に起こることがあります。
多くの方が訴えるのは股関節の外側痛や外転筋痛等が多いようです。
具体的には、これらの婦人科系の機能低下は神経メカニズムにより股関節の外転筋である中殿筋という筋肉の筋力低下が進むことが関係しています。
この中殿筋の筋力低下が進むと、股関節部分の寛骨臼と大腿骨頭部分の圧縮力が低下して緩んでしまいます。
したがって、股関節でお腹から降りてきた体重を支える力が低下してしまい、緩んだ分だけ大腿骨頭は外に移動し張り出てしまいます。
結果的に
これは、前額面でのお尻と太モモの横幅大きさの増大となって現れることになります。
また、股関節の外旋筋群の筋力低下も婦人科系の機能低下により
起こります。
その中で内閉鎖筋の筋力低下が亢進するとそれに筋膜的に接続している肛門挙筋が緩んでしまいます。
これらの、外旋筋群の筋力低下が進むと股関節は内旋になり、骨盤は前傾、腰椎は前彎傾向になります。
結果的に腹筋は緩んで下腹は膨隆することになります。
結論から言うと
婦人科系の機能低下は
股関節の筋力低下による関節の弛みを発生させて
最終的には
お尻の大きさと太モモの横幅の増大と関係することになります。
股関節の屈曲時に作用する
生体力学的には、腰椎の「前彎機能」は寛骨の前傾と股関節の内旋位を決定する重要な機能です。
一方で、股関節の伸展時に作用する股関節の関節包靭帯「特に腸骨大腿靭帯」の張力機能は寛骨の後傾と股関節の外旋やそれを保持するための腰椎屈曲に重要な機能です。
つまり、骨盤の前傾(股関節の内旋と下腹の膨隆)と後傾(股関節の外旋とお尻の垂れ)の機能は全く正反対の部分に調整機能があるということになります。
一般的には、
これらの非対応は股関節の位置の違いや仙骨の位置の違いに影響し最終的に目の大きさの違いや頬周りの膨らみの違いに
反映されてしまいます。
骨盤の股関節の関節面の運動機能は最終的に目の眼瞼周りや頬周りの弾力性に重要や関係があります。
最も深く関係するのは歩行時の足裏の接地面と関節の動きの周期です。
股関節の関節の月状面の軟骨部分の接触領域は
歩きはじめの最初の踵の接地時は約30%、最も足裏が地面と接地する立脚中期は98%、足が地面から離れている遊脚中期は20%というデータがあります。
歩行中、体重当たりの股関節反力は足が地面から離れているときは13%(50㎏の人で6、5㎏)、足裏が地面と最も接地する立脚中期は体重の3倍(50㎏の人で150㎏)以上になります。
股関節に最大に力が加わる立脚中期は寛骨臼切痕と寛骨臼横靭帯が僅かに広がって接触目を増大されることで最大圧を減少して軟骨下の骨に加わるストレスを軽減します。
股関節の関節唇は寛骨臼から約5ミリほど外側に突出していますが
大腿骨頭はこの中での陰圧の圧力により関節内の液体とともに吸引密封されることになります。
大腿骨前面が寛骨臼から露出する範囲を臼蓋前捻角(通常は約20°)といいますが、その部分の前にある関節包靭帯と腸腰筋腱がそこを覆い支持しています。
この部分の肥厚や短縮は過度の股関節の屈曲や前傾姿勢や股関節の伸展障害の原因となり猫背姿勢や頭部の過剰な前方移動の原因や顔の頬がたるむ原因となります。
また婦人科系の機能低下により衰弱する骨盤底や股関節外旋筋群の中で非常に重要な筋肉は内閉鎖筋という筋肉です。
こ筋肉は骨盤の小坐骨切痕で130°方向を変えてほとんど水平方向に走行する筋肉で骨盤底の肛門挙筋(腸骨尾骨筋)の圧縮と股関節の安定的な圧縮に最も深く関係しています。
股関節は体幹と下肢の両方の機能を調整する基部関節です。
上肢の関節は可動性が重要ですが
健常な股関節は運動を提供するよりも
十分な安定性を確保するために設計されています。
この点において、
上肢の肩甲上腕関節とは本質的に真逆の関係になります。
この股関節部分の筋力低下や不安定性、または疼痛があるとその問題は生涯に渡って日常的な活動の障害になってしまいます。
最も股関節に負担がかかる歩行周期の立脚相では関節包靭帯とその部分にある筋群で股関節の約60%の安定性を保持しています。
その中で特に重要な部分は腸骨大腿靭帯(Y靭帯)という部分です。
専門的な研究では、このY靭帯の機能低下は空腸、回腸、の機能低下と深く関係しており、さらに呼吸困難、臍の周囲の鼓腸、広頸筋の牽引痛、大腰筋や梨状筋の腫脹とともに発生する股関節痛(特に寛骨臼よりも5センチ位下方の痛み)や足関節の腫脹や痛みの原因となるとされています。
興味深いのは、股関節のY靭帯の衰弱は
しばしば上腕骨の上腕二頭筋腱の衰弱を引き起こすことです。
筋膜的には上腕二頭筋腱の筋膜は下顎のオトガイの位置に関係する筋膜です。
股関節と下顎はこの点で筋膜接続を経由して構造的に関係しあっているといえます。
また、可動性の大きな上肢の影響は顔面の表情筋や皮膚レベルですが
安定性が重視される股関節から体幹からの影響はその深層にある顔面骨や骨格筋の位置や弾力性に影響することになると考えられます。
ちなみに、
解剖学的肢位では
骨盤に対する大腿骨の回転運動の最大可動域は
矢状面では、屈曲約120°、伸展約20°
前額面では、外転約40°、内転約25°
水平面では、内旋約約35°、外旋約45°までの範囲とされております。