徹底集中肌質改善美容大学院
今月は、顔面全体の筋膜網の意味と働きについてのお話です。
毎回のことですが、皮膚のことについては全くふれません。
皮膚の下には皮膚や表情筋と直接つながる浅顔面筋膜(表情筋と広頸筋と同じレベル)と骨格と繋がる深部の筋膜(咬筋・側頭筋・耳下腺を包む)の2種類があり、その間に脂肪組織や神経血管リンパがあります。
皮膚は、これらの浅と深の筋膜の複雑な引っ張る力(張力)や縮む力(圧縮力)の影響を受けて働きます。
少し詳しく話すと、筋膜の繊維は2種類あり、皮膚の基底層の下での筋膜の膠原繊維は柔軟ですが、伸び縮はせず白色の光を放し網の目の様に張り巡らされています。
この網の目のように張り巡らされている筋膜と交わるように、伸び縮みの働きをする弾性繊維が絡み合っています。
ここで、重要なことは、筋膜は一般的に知られているような単に筋肉を包み骨膜に付着する包装物ではないということです。
また、脳からの知覚神経と運動神経の支配を受けており、顕微鏡で見ると伸び縮みの働きをする弾性繊維を網の目のような膠原繊維が取り巻きながら、それぞれが各部位で同じところの両端に共同で付いています。
したがって、これら2種類の筋膜は共同複合体として一体で働いて顔面の各部位で活動し、顔の内側・外側から加わる力に対して膨張と収縮を繰り返しながら活動しています。
ここで、お話している神経支配は筋紡錘やゴルジなどの伸展受容器のことではなく、今まであまり研究されていなかった筋膜自体の独自の動きのことを指しています。
たとえば、顔面の筋肉や筋膜複合体が膨らみすぎると痛みの痛覚と共に活力が低下して収縮をしてしまい縮んでしまいます。
紫外線からの皮膚への影響や顔面筋内での代謝産物の運搬や細胞の活動はこの筋膜の動きに大きく影響を受けます。
少し難しい話ですが、具体的に話すと、顔面の筋肉はこれらを包む筋膜網の中の固有受容器で起こった状況を神経系に送る働きがあり、その伝達情報を基に顔面の弾力バランスを保つ筋膜構造を保持する為に働きます。
また、筋膜の連続性の関係で顔面の筋膜の一部で起こった力は(たとえば、あごがうごいたことで法令線が出来たり更に目じりにしわができる))次から次へと伝わってゆき、顔全体の隅々まで広まって行くだけではなく、髪の毛のある頭や首までの離れた部位の変形や皺をもたらします。
少しわかりやすく、たとえて云うと、顔面の筋膜の構造は皮膚の下の浅いところの浅顔面筋膜は、顔全体を洗濯物を入れる網目だけで作られた四角や楕円状のボックスのネット様な空間のある形をしており、何処かの1か所を引くと引かれた方にボックスの網の全体が集まりその力の影響を受けて形が変形してしまいます。
またそれらは、顔面という液体の中で丸い綿の塊がほぐれて全体に広がり膨張して浮いているような状態で皮膚の下に張り巡らされています。
それに対して、骨格と繋がっている深い顔面の筋膜(耳下腺筋膜・深部側頭筋膜・咬筋筋膜)は、湖の中にある毬藻や、また、レジャーで使うハンモックのように各顔面骨の間を筋肉や神経・血管・脂肪を包み、さらに顔面の骨に架け渡しをながらその部位の形の柔軟性を保持しています。
そして、そのハンモック同士が、さらにそれぞれ各部と全体的に繋がり顔面深部全体の構造を全て接続しながら、顔面の適度の張を維持コントロールしています。
つまり、顔面の骨と筋肉と脂肪や基質はこの筋膜網の中で浮遊している状態で存在していることになります。
このことから、云えることは、顔面の皮膚はこの筋膜からの情報伝達を受けており基質をの働きや顔面皮膚への代謝に大きく影響することになるということです。
さらにこの筋膜形状は当然のことですが、表情筋を後ろから接続する側頭筋や咬筋の深筋膜や首と喉の部位を包む筋膜(頚筋膜浅葉)とつながり体全体の筋膜の張力と圧縮の影響を受けています。
例えば、足部の筋膜ルートから云うと足の拇指に外反母趾がある人は外くるぶし側(腓骨)の骨と筋肉が緊張してしまい、下腿の外側が緊張(腸脛靭帯)して骨盤の歪み(中臀筋の緊張)が生じます。
その力は反対側のウエストの腹斜筋(内腹斜筋)に伝わり、同じ側のバストの大胸筋を前方に引っ張り胸(胸郭)を前に出してしまい、反対側の首(上部僧帽筋)を通りその上の後頭骨部を下に引き下げてしまいます。
さらに、この足からの筋膜の力は、側頭部の深筋膜に伝わり顔面の骨と筋肉や脂肪を包む顔面筋膜の歪みを作ってしまいます。
特に影響を受けるのは、コメカミの部位の骨(蝶形骨翼状突起)と下あごの骨(下顎骨)で、強力に口を閉じる筋肉で口の中にある内側翼突筋はその骨の外側(浅頭)、内側(深頭)の2か所についており、そこから降りてきて、アゴの下の角(下顎角)に付きアゴを上からぶら下げています。
またアゴを前に出したり横にずらしたりする筋肉(外側翼突筋)は顎関節の部分(下顎頭)から2か所に分かれ(上頭・下頭)コメカミの骨(蝶形骨)に付き、顎関節の位置をコメカミの位置からぶら下げています。
さらに耳が付いている側頭骨部の筋肉(側頭筋)と頬骨に付いている筋肉(咬筋)の2種類の筋肉も内側と外側の両側からアゴを包むように上からぶら下げています。
これらの筋肉と骨の両方を包む筋膜の過緊張(腫れ)と弛緩(弛み)は顔面正面の上あご(上顎骨)についている表情筋や脂肪組織の変形を齎し、皮膚の基底層から上の皮膚の歪みの原因になり機能に影響を与えることになります。
尚、この異常は顔に栄養を送る顔面動脈の吻合部(動脈同士が接続するところの血管)での血流不足や
顔の老廃物を運ぶために頬の内側に集まる静脈網(翼突筋静脈叢)への排泄を悪化させ首と顎の下の腫れや浮腫みの原因となります。
また、この骨格系からの複雑なルートとは別に顔に影響を与える重要なルートがあります。
少し詳しい話ですが、頭蓋骨の固有の縫合部での微小な斜端構造方向での動きは、顔面での筋肉の動きによる筋膜の張力の対して、下顎骨・上顎骨・頬骨の付着部で、その力を反発して押し返す働きを作り出し、その引き合いや押し合いで生じる緊張や張りが顔のバランスを保っています。
具体的には、鼻唇溝での法令線やしわは筋肉とそれを包む筋膜が、その上の皮膚や筋膜の下に潜り込み、深く食い込むことで生じるわけでその主原動力になるのは、まぎれもなく筋膜の作用です。
今まであまり知られていなかった、この新しい生体力学メカニズムの考え方から云うと、顔面の筋膜の張力と収縮力のバランスが筋肉や皮膚の弾力性の影の立役者であり縁の下の力持ちかもしれません。 .