2019美容矯正の解釈学
質問者::Yuko-Mさん(東京都渋谷区)、美容矯正セラピスト
勝山先生に質問です。
腕をトリートメントすると顔も変化するのですが、どのようなメカニズムで変化するのでしょうか。少し詳しく教えてください。
質問の回答です。
身体には腕以外にも沢山顔の変化に影響する部分がありますが、ここでは腕に焦点を絞って顔と腕の筋膜の関連性の概要についてのお話しをいたします。
顔の変化に最も大きい影響があると思われる部分は腕の筋膜ラインです。
立位姿勢では、このラインは体幹の肩の部分からぶら下がっているため胸部の筋膜の緊張を経由して直接的に顔面の筋膜を下に向かって牽引します。
したがって、腕の関節の動きの制限と筋肉や筋膜の過緊張は顔の歪みやたるみの部分に直接的に関係します。
そもそも、上肢は片側1本で約4㎏から4,5㎏の重さがあります。
これが、肩の関節からぶら下がっています。
この腕の重みのみでも顔を下に向かって牽引しています。
ですから、腕の筋肉が太かったり、リンパや血液が溜まり浮腫んでいたりすることでさらに顔の筋膜は下にむかって牽引されます。
また、腕や手は様々な動作に対応できるように関節の構造やつなぎ目が下肢より複雑になっています。
一般的にはリンパや血流の流れが滞りその浮腫みが顔のたるみの原因と考えがちですが、構造的な観点からではそれだけでは説明としては不十分です。
一般的には手から前腕・上腕・肩関節までの個々の関節部分の腕の使い過ぎや姿勢による過緊張は胸部の筋膜の過緊張の原因となります。
その影響は鎖骨の筋肉や筋膜を経由して口角を下方に引き下げてしまいます。
極端だと思われるかもしれませんが、この影響で法令線、ゴルゴライン、マリオネットラインの下地が形成されてしまいます。
これは皮膚の老化とは無関係で起こります。
この関連性について少し具体的に詳しくお話し致します。
例えば、手首を反らし(伸展・背屈)たり、曲げ(屈曲・掌屈)たりするたびにその力は肘の関節に伝わります。
特に手首を反らす動きは二の腕と肩を包む三角筋という筋肉に伝わります。
この三角筋の肩の前側にある前部繊維は解剖学的には首と口元を繋いでいる薄くて幅の広い広頚筋の外側部に繋がります。
したがって、この部分の過緊張は広頚筋外側部を牽引するために下顎のエラ部分の方向に口角を斜めに引き下げることになります。
その原因の一つとして考えられるのは、手首を反らす動きをする時に肩の三角筋との間で緊張して短縮して短くなっている部分です。
その部分は具体的には前腕の手を反らす伸筋群と肩を挙げる三角筋を接続する外側筋間中隔という筋膜部分です。ここの部分の過緊張が口角を牽引して下垂する元凶の部分です。
また、この部分の筋膜は前腕と二の腕を接続しているだけではなく、二の腕の前側と後ろ側の筋肉をパーティションのように仕切っている部分です。
この部分の過緊張はそれぞれの筋肉の別々の収縮の制限やリンパと血液の循環にも影響して浮腫みのある太い腕の形成される原因の場所です。
座位姿勢で肘を曲げてパソコンを操作する多くの腕や肩の動きに問題のある人達は必ずと言っていいほどこの部分が緊張しています。
また歩行時に前に腕を振り出す時にもこの部分の緊張が起こるため口角を外側に牽引することになります。
さらに腕を後ろに動かす動作は、大胸筋の筋膜を後ろに牽引することになるためその影響で広頚筋の中間と内側部が牽引されるため口角を下方に引き下げることになります。
歩行時での体幹の非対称な捻じれ運動と腕の非対称な動きも口角の内側・外側の下垂の原因として考えられます。
次に手首を曲げる動きについてお話し致します。
この動きは肘の内側に力が伝わって行きます。
二の腕の部分から先は胸の大胸筋部の緊張と広背筋(腰仙部)と大円筋(肩甲骨)にも力が伝わって行きます。
特に胸の部分では、解剖学的には大胸筋を覆う前面の筋膜と鎖骨胸筋筋膜という大胸筋と小胸筋を仕切っている筋膜が緊張します。
大胸筋を包んでいる筋膜は首と口角につながる広頚筋の中間と前側の筋膜と接続します。
したがって、口角を下に向かって牽引することになります。
その原因の一つとして考えられるのは、手首を曲げる動きをする時に胸の大胸筋との間で緊張して短縮して短くなっている部分です。
具体的には前腕の屈筋群と大胸筋を接続する内側筋間中隔という筋膜部分です。
この部分の筋膜も前腕と二の腕を接続しているだけではなく、二の腕の前側(上腕二頭筋)と後ろ側の筋肉(上腕三頭筋)をパーティションのように仕切っている部分です。
この内側筋間中隔の解放は多くの人の弛んだ顔のリフトに貢献することは確実です。
指でキーボードを打つ長期的な姿勢や動きは多くの場合肘の内側から腋窩部の緊張と胸部の緊張をもたらし結果的に広頚筋の下方への牽引の原因となります。
次に肘を曲げる動きと伸ばす動きの顔に関係するお話しを致します。
この動きは両方とも肩甲骨の機能や動きに深く関係しその力の作用は下顎の位置や顔の傾きに影響します。
肘を曲げる動作は上腕二頭筋短頭の緊張により肩甲骨の烏口突起に伝わります。
さらに、烏口腕筋・小胸筋にも筋膜的に緊張が伝わり、その部分のリンパ循環や神経機能に影響が出てきます。
腕が浮腫み太くなることとこの部分の過緊張が深く関係します。
解剖学的にはこの部分は内臓の筋膜が胸骨の部分で二つに分かれたものの一部です。
もう一つの部分は喉から舌骨を上り口腔底や下顎骨につながります。
肘が伸びず、長期的な肘や腕の片側の曲がった状態は、結果的にアゴ先を同じ側に引き下げることになりアゴや首の捻じれの原因となります。
アゴ先が牽引されるとその方向に顔面筋膜も移動します。
その結果、法令線の形成や頬部の膨らみ、上唇と下唇のズレ、移動側の眼窩部の浮腫み等が顕著に表れてきます。
腕を伸ばす動作は上腕三頭筋長頭の緊張より肩甲骨の位置や機能に影響します。
この筋膜は特に肩関節の動きをコントロールする腱板筋群に影響します。
さらには肩甲骨から上の頸部の緊張(肩甲挙筋の緊張)や頭部(外側頭直筋の緊張)や顔の傾きに影響します。
長期的に肘を曲げるのが困難な状態が続くと、それが原因で頭が傾いた方向へ顔面の脂肪組織が移動してしまうため片側の顔全体が浮腫んだ状態になってしまいます。
今まで、個別に腕と顔の関係をお話ししてきましたが、口角や頬周りの下垂の原因の一つに肘に問題があることがわかりました。
また顔は手首の骨(手根骨)にも関係しています。
、口角の下への下垂は月状骨・有頭骨・有鈎骨の位置が関係し。
アゴ先の移動と喉から首の捻じれは舟状骨・大・小菱形骨が関係します。
頭や顔の傾きは三角骨・豆状骨が関係します。
顔と腕の連続性の関係は簡単にテストすることが出来ます。
まず、座位姿勢でアゴを引いた状態で、腕を前後に振り子のようにスイングします。
その後で、首とアゴを前に突き出した状態で同じ様にスイングします。
もし、アゴを突き出して腕をスイングした時に腕の動きが鈍くなったり、動きに重みを感じる様であれば明らかに顔のたるみは腕に関係しています。